厳しい気候と向き合う 新ニセコクオリティ
ニセコと言えば皆さんは何を思い浮かべますか?
やはりまず初めに思い浮かべるのは『雪』ですよね。このブログを書いている今は10月中旬。ニセコでは間もなく初雪が降るかもしれません。
豪雪地帯であるニセコでは、『パウダースノー』を求め、シーズンになれば国内外と観光客でにぎわうリゾート地をイメージされる方も少なくないと思います。勿論、雪時期以外も自然の中で楽しめるアクティビティが充実しており、通年満喫できる環境が整っていますよ!
そんなニセコ町産業のもう一つの代表として『農業』があげられますが、本日は冷涼な気候の中、羊蹄山の麓でワインを醸造するドメーヌ『ニセコワイナリー』での経験について少し触れさせていただきたいと思います。
ザ・ニセコヴィンヤードから眺める羊蹄山
【ニセコの収穫時期】
昨年よりこの収穫時期を『今か!今か!』と心待ちにしていました。
場所・品種・気候・土壌など、様々な条件によって異なりますが、8月~9月が一般的にブドウの収穫時期となります。ニセコでは雪解け時期が遅く栽培期間が短い為、他地域に比べると成熟時期が遅く、10月以降の収穫となる事が多いそうです。
【ブドウ収穫】
ニセコワイナリーでは複数品種を栽培していますが、主に『Chardonnay(シャルドネ)』と『Pinot Noir(ピノ・ノワール)』を栽培しており、シャンパーニュ方式でスパークリングワインのみ醸造を行っています。
ヴィンヤードは、『見晴らしヴィンヤード』『羊蹄ヴィンヤード』『ザ・ニセコヴィンヤード』と3カ所。約8000株が植樹されています。
ブルゴーニュとシャンパーニュを思い浮かべる品種となりますが、オーナー曰く、
『ニセコの気候はシャンパーニュ地方に似ており、スパークリングを作るのに適している』
との事。
とは言え、積雪量が多いニセコにおいて、あてがわれる労力は並大抵ではありません。
Chardonnay ~シャルドネ~
3年前に開拓された『ザ・ニセコヴィンヤード』では、今年が初収穫となりました。一から開拓を行った際は、近隣の高校生も手伝いに来てくれたそうです。
ヴィンヤード名に【The(ザ)】を付けたことに、
「羊蹄山を一望でき、一番の畑だから【The】を付けたんですよ」
と、おっしゃってました! ニセコワイナリーの『Grand Cru(グランクリュ)』となりそうですね!
畑にはシャルドネとピノ・ノワールが植樹されており、畑中腹においては大豊作です。
上部では、一部結実が少なく収量が減ってしまいましたが、
「広大な敷地の中、植樹以前の土壌性質が細かく分かれていた。そして購入以前にどのような畑を作っていたかまでは分からない。今は今年の状況と照らし合わせ、新たに土壌を調べ直し、次年度の対策を研究している」
との事。それだけでも、とてつもない研究だと感じ取れます。。。本当に大変なお仕事です。
Pinot Noir ~ピノ・ノワール~
Kerner ~ケルナー~
【害獣・害虫対策】
農家にとって害獣・害虫被害は死活問題とよく耳にしまう。
そんな中、ビックリしたのが『アライグマ』です。
アライグマと聞くとどうしても動物園のかわいいイメージが湧いてきますが、農家にとっては大敵。とても頭がいいので、美味しいブドウを食べると味を覚えてしまい、今度は仲間を連れて食べに来てしまうとの事。狐やタヌキとは違い、手を使って房ごととるので油断ならないそうです。その為、摘房時に選果したブドウはその場に捨てず、バケツに纏めて食べられないよう回収しています。その作業は、畑の健康状態を保つことにも付随しているとの事。
電柵で対策しても、その隙間を通り入ってくる巧妙さ。。。その為、電柵トラップを二重にかけ、鼻先が電柵にあたるよう設置することで対策していました。
それ以外にも、スズメバチ対策では、昨年ブドウへの被害が多かった為、今年は巣を作る前に女王バチを捕まえる罠を設置するなど、想像以上に自然との闘いが伺えます。
収穫と選果
害獣対策の電柵
【収穫後~積雪対策】
収穫されたブドウは醸造場に集められ、搾汁・発酵が行われます。発酵期間は1~2ヶ月。
一定温度の用水(約40℃)と野生酵母を30分漬け、果汁と共に1000Lのステンレスタンクへ。発酵期間中は温度が上がると傷んでしまう為、タンクの周りは流水カバーに覆われ一定の温度帯がキープされています。
一次発酵後は『瓶詰・瓶内二次発酵・瓶内熟成・澱抜き・添加・打栓』となり出荷。まさにシャンパーニュ方式。※一部工程を省略。
畑では、ブドウが収穫されこれから雪に向けての対策が行われます。
収穫が終わったブドウ樹は、これから葉が落ちるまで光合成を繰り返すことで、果実への栄養が今度は根に向かうようになります。短い期間ですが、栄養を根に蓄えることで、冬時期を乗り越えるエネルギーとなるそうです。
葉が落ちた後は一気に剪定を行い、固定ワイヤーから外され、積雪荷重に耐えられるよう地面に寝かされ、一冬を過ごすこととなります。
各所に設置される固定ワイヤー
本を介す、ワインを扱う、セミナーで得た知識、更にはささやかな体験だけでは実際に作物を育て上げ、ワインを作り上げる労力は計る事はできません。
しかし、実際に経験し苦労や失敗を積み重ることで、今のニセコワイナリーのテロワールは生まれているのだと感じる事が僅かながらにできたかと思います。
「北海道のワインが注目されている中、豪雪地帯のニセコでブドウ作りなど絶対無理と言われてきた。だが、努力と試行錯誤を繰り返す中、18年かけ納得のいくワインを作る事ができてきた。これからはこれがニセコのスタンダード基準になりますよ」※一部省略
これが新ニセコクオリティか!と思うと同時に、作り上げたオーナーの努力と優しさに感銘し、そして今後も可能な限りお手伝いさせていただきたいと思いました。
まだまだ語りたいことは数えきれないほどありますが、機会があればニセコワイナリーのワインをまずは皆さんも楽しんでみてください。
味は間違いありませんよ!
JAS有機認定Vineyard 100%無化学農薬・肥料
Niseko Winery(ニセコワイナリー)
北海道虻田郡ニセコ町近藤194-8
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